「ママが命を絶つ家庭を増やしたくない」
自分を原点回帰させ、心の繋がりを保てる『ぬくぬく』

今回のお話は、ぬくぬくで月1回開催している不登校を考える保護者の会『ほっとSTORY』でアドバイザー&相談員として参加いただいている鈴木明美さんです。

明美さんは不登校カウンセラーとして江戸川区で【セラピールームちるどれん】を運営。公認心理師、ゲシュタルト療法、産業カウンセラー、NLPと幅広く学び、引きこもり支援のNPO、行政のユースカウンセラーとして不登校引きこもりの家族ケアを行い、家族の不安を解消する支援を行っていて、3人のお子様がいるお母様です。

ハンマーで夫に殺されそうになりビクビクと怯え、子どもよりも夫中心の生活に

— — : 明美さんは、現在不登校引きこもり家族のケアや家族の不安を解消する支援を行っていらっしゃいますがカウンセラーを志した経緯を教えていただけますか?

明美さん: 私が今にたどり着いたのは、小学生の頃のいじめ体験が大きく関係しています。当時日替わりでいつも誰かがいじめられていましたが、親にも先生にも相談できず嫌々学校に通う日々でした。5年間くらいそんな状態でした。
子どもが生まれた時に「自分の子どもがいじめられる側にもいじめる側にもなってほしくない、何か役に立つことをしたい」とカウンセラーになることを考え始めました。
勤務先で産業医やカウンセラーと接する機会があり、心理学やカウンセリングの勉強をするようになり、民間のカウンセラー資格を取り、現在メインで行っているゲシュタルト療法、トラウマ療法にも出会いました。

26歳で結婚し子どもを3人授かりましたが、夫がずっと怖くて。何が怒りの沸点になるか分からなくて、怒りのスイッチが入るとそのエネルギーが半端ない。壁に穴を開ける。グラスを投げつけ、握りつぶして血が出る。威嚇される、ちゃぶ台返しされたこともありました。中でも浮気をしたと勘違いして「てめえ、ぶっ殺すぞ」とハンマーで殴られそうになるっていう衝撃的な体験をして「あ、 この人と別れようと思ったら殺されちゃうんだな」って思っちゃったんですね。別れられないんだって。その時から「この人を怒らせちゃったら怖い事になる」っていうのが潜在意識に入ったんだと思います。

いつも夫に気を遣う。ビクビクして夫に合わせて生活をする。当然子育ても夫を怒らせないように、夫中心の子育てになってしまっていて、子ども中心の子育てじゃなくなってたんですよね。夫中心に家庭が回っていました。

「僕はママのロボット」「パパに全否定されてきた」と子どもに言われ
子育てと夫婦関係を見直す

— — : それは明美さんもお子さんも大変な怖い経験をされましたね。

明美さん : 子育てにも影響がありました。私が「ちゃんとお片付けしなさい!」と子どもに言って、子どもがちゃんとやったとしても「そんなふうにしかできないの?」と、もっともっとと子どもに対して厳しく「主人に怒られないようもっとできるように」と、手がかからない子に育てようとすればするほど、子どもの心は擦り減っていくということが起きていたとカウンセリングの勉強することで気づきました。

長男は保育園の頃にチック症状があり、小学生の時に「僕がママの言う通りにするロボットだったら、ママは僕の事を好きなんでしょ」と言ってきたこともありました。長女も父親との関係が悪く「ずっとパパに否定されてきた」と言って、長女は妊娠出産を親に報告出来ず、孫が乳児院に入るという経験もしました。とてもショックでした...。報告があってからフォローし、及川さんには婿の就職先をご紹介いただき、助けていただきました。今は元気に親子一緒に暮らしています。

私が主人に気を遣ってるのが、子どもにも影響して父親との確執が生まれる。だからそれを少しずつカウンセリングの勉強をしながら自分自身の中でも変えていくというか、課題だなと思って家族間の問題に取り組んできてたっていう感じですね。
そうすると、家族の関係性も少しずつ変わっていくみたいなことが起こってきました。末っ子だけは1度も夫に怒られたことがなく、とても仲が良くそこだけが救いだったって感じですね。

子どもの同級生の母親が自殺したことが、カウンセラーになるきっかけに


そんな中、長男が小学6年の時に、交流のあった息子の同級生のお母様が自殺しました。
同級生の子は5年生くらいから不登校になり、お母さんもかなり悩んでいたので、カウンセリングの勉強中だった私は時々メールを送ったり、漫画を差し入れたりしました。お母さんが命を絶ったのはあまりにも突然で原因は分かりませんが、ショックでした。
その同級生の子が今は元気になって進学し社会人になっているのですが、「空から見てるかな。生きてて見れたら良かったなぁ」と思って、
【母親が思い詰めて悩んで亡くなってしまう事を防ぎたい】
【子どもが元気になったときに、ママも生きててくれるような家庭が増えてほしい】とカウンセラーになる決意がさらに強くなりました。


— — : 辛い想いが明美さんを動かしたんですね。子どもの不登校の原因にはどんなものがありますか?

明美さん : 親子関係が原因で不登校になるとは限りません。学校、友達、先生との関係性、その子のモノの捉え方など色々な理由が相まって不登校になります。本人は理由が分からず不登校になっている子もいます。原因が相まっているので、どれが原因か分からない。「何が原因なの?」と聞かれると、その子は自分でも分からないのでしんどくなる。
私のカウンセリングの中では、理由は聞きません。大人は原因を聞きたがりますが、深堀りしていく程、子どもは辛くなります。
不登校になった原因を探ることではなく、体がどう反応してるか、どのようにその時していたの?と自分の体に起きてることにフォーカスし、 そこから体の声を聞いていく
みたいなことをしていくんですね。そうすると、現実を思考でどう捉えていて、感情や体は何を感じているのかに気づくことができるんです。 

原因を探すっていうよりも、気づきを促す。その子にとっての何が安心安全が何なのかを見つけていく事が、私と親御さんが一緒にやっていくことだと思っています。

— — : 心理学を学んで、どんな変化がありましたか?

明美さん : 夫婦関係に一番変化がありました。これまでは夫の事を怖がっていて地雷のような存在で言いたいことも言えなかった。学んでからは夫が理解できるような言葉で伝えられるようになりました。夫自身が自分の状態に気づく事で感情のコントロールが上手くなっていって、怒ることが減りケンカも少なくなりました。

心理学や生理学、カウンセリングを学んで良い事ばかりです。夫に合わせる事が正解じゃなくて、本人の気づきが必要だと分かりました。人間って人それぞれで、コントロールできないし、人間は理解できないものなんだということが理解できました。
理解出来ないから、カウンセラーは導き手ではない。あなたの人生をあなたが満足できるように、気づきを促し一緒に伴走してくれる存在がいる。それが大切なんだということが分かりました。

自分軸を原点回帰してくれる『ぬくぬく』

— — : 『ぬくぬく』との出会いのきっかけを教えてください。

明美さん : 震災の翌年2012年に地域の繋がり、お母さん達の助け合えるネットワークが必要だと思って
居場所となる様な地域コミュニティ「縁が和」を作って江戸川区役所のボランティアセンターに登録に行った際に
及川(理事長)さんの記事が掲示板に貼ってあったのを見つけて「こんなステキな活動を始めた人がいるんだ!」と
それをコピーしてもらって保存していたんですね。偶然知人が及川さんを紹介してくれて及川さんが「遊びにきてね〜」と言って
くれたので、すぐに伺いました。そこで「不登校の親の会」という不登校の子どもを持つ親たちの集いを『ぬくぬく』で開催していることを知り、毎月参加するようになりました。実は区役所でコピーしてもらった記事の人と気づいたのは、かなり後になってからです(笑)

— — : 『ぬくぬく』は明美さんにとってどんなところですか?

明美さん : 及川さんは朝から夜まで365日『ぬくぬく』を運営し、子どもたちの未来のために尽力しています。尊敬しかない。素晴らしいです。子どもや困ったことを抱えている家庭に、愛情をかけていらっしゃいます。
それに私の活動の原点である「お母さんが命を絶った家庭を増やしたくない」一番大切な部分を忘れないように原点回帰させてくれる場所です。及川さんは、私と活動の原点みたいなものが繋がっているような気がしてて、会うとエネルギーがもらえて、大事なことを思い出させてもらえます。
「不登校の親の会」で『ぬくぬく』に来てママ達の話を聞いて、みんなで話をして、「こういう場所があって良かった」と言う声を聞けて、みんなもわたしも元気になって帰っていきます。

—  : 良かったです。zoomとかLINEとかインターネットで繋がれて便利になってますけど、やっぱり直接対面で話すとその人の表情だったり
声の質感とかってリアルじゃないと分からないじゃないですか。だから会う場所って大事だなと思います。

明美さん :物理的なことだけじゃなくて心の繋がり、それもすごい大事だと思って。

例えば、及川さんから、コロナ禍で仕事を辞めた息子の就労支援をして頂いてる中で「自分は見捨てられていない」と思ってると思うんですね。
彼の中でいざという時、繋がってくれる場所みたいな。
カウンセリングも大事だけど、助けたり助けてもらったりできる誰かがいる、居場所がある、自分の弱さを出せる繋がりがあることが大事だと思っています。繋がりがなくなっていくと人は病んでいきがちですが『ぬくぬく』の扉はいつもオープンで「いつでもどうぞ、繋がれるよ」って迎え入れてくれるような場所ですね。誰の何のためにやっているのか、ブレない姿を及川さんが見せてくれています。

自分以外に子どもを見てくれる人がいる、子どもを安心して預けれることがあることは素晴らしい。ご自身の「安心」の感覚を信じて下さい。

— — :  明美さんがこれからやってみたいことはありますか? 

明美さん : 地域コミュニティ「縁が和」のママたちと『ぬくぬく』に来ている子たちとの交流会としてお絵描き、工作、手遊び、わらべ歌、読み聞かせのふれあいの時間を定期的にしたいです。自分の子育ては落ち着いてきてるから、おばあちゃん的立場で『ぬくぬく』利用者のママたちに
「子育て大変よね」って寄り添って関われたら、ちょっとステキかなと思ってます。
また、私はカウンセラーとしても、子育てに悩んだ親としても話をすることが出来るので「不登校や引きこもるのは悪ではなく社会から自分を守っている。エネルギーを貯めている」と親御さんに伝えたいです。

— — :  最後に『ぬくぬく』を利用している方にメッセージをお願いします。

明美さん : 『ぬくぬく』と繋がって自分以外に見ててくれる人がいて、そこに子どもを任せられることが素晴らしい事だと気づいてくださいね。
ぬくぬくに対して【安心】という心のフィルターがあることで、子どもにもその【安心】が伝わる。子ども達はその安心に感覚的に気づいていて、選んで『ぬくぬく』に来ている。その感覚を信頼して自分と子どもの安心して繋がれる場所を広げていってほしいですね。

— — : ありがとうございました。明美さん、今後ともぬくぬくをよろしくお願いします。楽しい企画をどんどん計画していきましょう!!

鈴木明美さんにカウンセリング等の相談されたい方はこちら
【セラピールームちるどれん】 https://t-child.com/